暗号資産ビットコインは、安全資産としての需要を集めて上伸し続けているようだ。

米議会では追加経済対策が合意され、財政赤字は一段と悪化拡大する見通しだ。

この流れは今後さらに続くことになるかもしれない。

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 暗号資産ビットコインの上昇が止まらない。ゼロ金利政策が長期化する中、米国では追加景気対策による財政赤字の巨大化で、ドル相場が主要通貨に対して下落し、安全資産への需要が高まっている。

 ドル指数(DXY)は年初来6.16%下落(1カ月で2.22%安)しているが、代表的な暗号資産ビットコイン(BTCUSD)は同233.33%上伸している。同じく暗号資産のイーサリアム(ETHUSD)は401.35%、リップル(XRPUSD)は195.13%それぞれ上昇している。一方、金(GC00)は8月に1オンス=2089.20ドルの高値を付けてから11月末に1780.50ドルまで反落したが、その後はドル安を背景として切り替えし、1900ドル台を回復している。

 米議会の与野党指導部は20日、ようやく9,000億ドル規模の追加経済対策で合意し、21日に採決が行われる見通しとなったと報じられている。

 バイデン次期大統領が指名した経済チームの顔ぶれは、いずれも雇用を下支えするための財政出動に対する支持を繰り返し公言している。公的債務と財政赤字が一段と膨張しても、改めて心配すればいいことだと言う。ちなみに、クリントン政権で財務長官を務めたローレンス・サマーズ氏は先ごろ、財政出動を抑える保守的なルールを考え直す「革命」が必要だと発言している。

 米株式市場は、連邦議会上院で次期政権与党となる民主党が主導権を握れず「ねじれ」が生じる可能性を好材料と受け止めている。ジョージア州で来年1月5日に行われる2議席をめぐる決選投票の行方が注目されるが、ロイター通信によれば、最近の世論調査で民主党の2候補がやや優勢とされている。ジョージア州を民主党が制すると、上院の議席数は民主・共和両党ともに50議席となり、カマラ・ハリス次期副大統領が投票権を持ち、民主党が上下両院を支配することになる。

 民主党のシューマー上院院内総務は、20日に合意した追加経済対策が「最終的なCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)への経済対策にはならない」と語った。つまり、次期政権も議会も、来年はさらなる景気支援策を打ち出す可能性が高いと考えるべきだろう。

 次期財務長官に指名されたイエレン前連邦準備制度理事会(FRB)議長は、議長職にあった当時、金融政策の「正常化」には力を入れなかった。後任のパウエル現FRB議長も、2022年2月の任期いっぱいまで超緩和政策を維持する構えだ。パウエル氏を続投させないとしたら、バイデン氏はさらに「ハト派」の人物をFRB議長に指名できることになる。

 ワクチン接種はようやく始まったばかりで、COVID-19の感染拡大に歯止めがかかる様子はない。米国では失業保険新規申請件数が再び増加して、景気の腰折れ懸念も根強く残る。したがって、追加経済対策は十分容認され歓迎されるだろう。

 しかし、財政赤字の拡大に歯止めをかけないのは、長期的には決して良いこととは言えないだろう。

 堅調な米株式相場は、実体経済からかい離していると指摘する声も以前から少なからずある。これまで、相場はバブルの形成と崩壊を繰り返し経験してきた。安全資産を模索する動きの背景には、経験値に基づく警戒感があるとも言えるだろう。

 ちなみに、ゴールドマン・サックスのアナリストは先週、ビットコインが金に代わってインフレヘッジの手段となるとの一部投資家の懸念は当たらないとリポートで述べている。ビットコインの人気が高まっても、最後手段としての金の地位を揺るがすことはないと言う。

 機関投資家や富裕層は、確かにようやく暗号資産をポートフォリオの一角にわずかながらも組み入れる動きをみせているが、決済処理の透明性に対する懸念などがある他、個人投資家の投機的取引で値動きが荒いため、基本的には暗号資産には手を出そうとはしていない。

 ゴールドマンによると、金を売ってビットコインを買うような動きを示す証拠は確認されていない。「どちらも共存できると思う」と述べている。