米国株式市場では、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に対するワクチン開発の進展が期待され、米大統領選挙を巡る不透明感が薄れて次期政権による大型の追加景気対策や、米連邦準備制度理事会(FRB)の強力な金融緩和が続く見通しなども背景として、投資家の強気な姿勢が拡がっている。
ダウ工業株30種平均は先週、初めて3万ドルの大台をつけ、S&P500種指数も最高値の更新が続いている。ここまでの相場をけん引したのは、COVID-19のパンデミック(世界的流行)後も強みを発揮している大型ハイテク銘柄で、社会の行動変容をさらなる追い風とすることが見込まれる。
この流れに乗り遅れた古くからのハイテク企業も、状況を一変させるような新製品を打ち出すことがあり得る。アップル(NASDAQ:AAPL)もかつてパソコン事業が低空飛行を続けたが、iポッドやiフォーンを手掛かりに米国初の2兆ドル企業に成長した。
しかし、いつの世にも勝ち組がいれば負け組もいる。確かに視界が開けているハイテク企業も少なくないが、勝ち残れる可能性は次第に少なくなると思われる。爆発的に成長する企業よりも、月並みか悪くすれば市場から追われるような企業の方がずっと多いものだ。
投資情報サイトのインベスターズプレイスは、現在保有しているならば「売り」を考えるべきときかと思われるハイテク銘柄をいくつか紹介している。いずれもこれまで好調に成長してきたが、絶好調の峠は過ぎたと考えている。
自動車売買サイトを運営するカーズ・ドットコム(NYSE:CARS)は一時、次に大きく成長する銘柄としてもてはやされた。2015年から17にかけてのわずか2年間で、株価は455%も急騰した。ところが17年10月に50.53ドルの最高値を付けて以来、下落傾向をたどっている。2019年に身売りに失敗した際には、1日で株価が34%下落した。
結局、誰もがオンラインで自動車を購入したいとは考えないことが明らかになったと言える。COVID-19のパンデミックが同社の事業をさらに縮小させている。
中国のハイテク銘柄は、受け皿となる市場規模への期待から人気を集めてきた。オンライン不動産仲介事業を展開するファンド・ネットワーク・グループ(NASDAQ:DUO)もその1つで、中国国内の自家保有率が高まり、インターネット利用者が9億人を超えて拡大する中、未来は明るいように思われた。
ところが、2019年11月に新規株式公開(IPO)した当初こそ株価は上昇したが、昨年末以降はほぼ下落の一途をたどっている。同社の米国預託証券(ADR)は現在、7.50ドル程度で取引され、年初来では50%余り下落している。
今年7-9月期の売上高は予想に届かなかったばかりでなく、前年同期比9%減となり、1株利益(EPS)は前年同期比43%も落ち込んだ。中国経済はCOVID-19の影響からいち早く抜け出し、同国の不動産市場は急速に回復しているので、COVID-19を言い訳にできる状況とは思われない。米国市場での規制強化により中国銘柄を保有するリスクが高まるなか、この銘柄を抱え続ける理由は見当たらない。
科学者や技術者向けの測定機器や自動制御ソフトウエアなどを専門とするナショナル・インスツルメンツ(NASDAQ:NATI)の株価は、2018年3月に52.81ドルの最高値を付けて以来、概ね40ドル台で推移を続け、今年3月に付けた27.02ドルの安値からは持ち直したものの、1月の水準を回復できずに37.50ドル程度で推移している。この銘柄に対する各社の投資判断は厳しく、さらに下落する前に売りを考えるべきかもしれない。
ウェブサイトやモバイルアプリのパフォーマンスをリアルタイムでモニタリングするSaaSシステムを提供するニュー・レリック(NYSE:NEWR)も、2017年から18年にかけて株価が急騰したが、その後は苦戦を続けている。
同社は今年8月、顧客が追加サービスを契約していないことを明らかにした。このため、プラットフォームの改良で対応を試みているが、顧客が新たなプラットフォームに移行するよりも他社のサービスに乗り換える反応を見せている。JPモルガンのアナリストは、ニュー・レリックの戦略に懸念を示し、投資判断を引き下げた。
今年7-9月期のEPSは0.07ドルの損失を計上した。昨年同期の0.24ドルに対し、わずかながら0.02ドルの利益を確保するかと思われていたが、その予想にも達せず、決算発表後には1日で15%株価を下げた。
旅行産業向けのソフトウエアやSaaSソリューションを提供するセーバー(NASDAQ:SABR)は、過去半年の株価推移を見る限りでは3割余り上伸しており、それほど悪いようには思われない。
しかし、COVID-19のパンデミックが収束する兆しを見せない中、ワクチン開発への期待は高まっているが、世界的な旅行産業の回復は数年先まで見通せない状況だ。世界初のオンライン航空券予約システムを開発したセーバーは、航空会社だけでなく、クルーズ運営会社やホテルチェーンにいたる旅行産業を顧客としている。
同社の株価は、過去最高値を付けたのは5年前で、現在は11.70ドル程度で年初来では50%弱下げた水準にとどまっている。次のパンデミック拡大が旅行業界を襲う前に、手放しておいた方が良さそうに思われる。
ガソリンスタンドや病院での支払い、旅行決済などを中心に法人カードサービスを手掛けるWEX(NYSE:WEX)については、判断が分かれるところかもしれない。ウォール・ストリート・ジャーナルが20社を対象に行った調査によると、11社は投資判断を「ホールド」としており、8社が「バイ(買い)」、1社は「オーバーウエイト」としている。ところが12カ月先の目標株価の平均は、現在の株価(181.50ドル程度)よりも1割低い163ドルとなっている。
WEXが主な対象とする業界は、COVID-19の悪影響を大きく受けている。ガソリン価格が下落し、感染拡大に伴い旅行が自粛される中、同社が扱う決済額は落ち込んでいる。医療機関も利用者が大きく減っている。
WEXの株価は過去15年間、堅調に伸びてきたが、今年は大きく落ち込んだ。COVID-19のパンデミックが終息すれば、持ち直す可能性はあるだろうが、影響が残る限り回復には時間がかかるだろう。今後に期待して我慢して持ち続けるという考え方もあるだろうが、もっと見通しの明るいハイテク銘柄に乗り換えた方が良さそうに思われる。