ソブリン(主権国家)の公的債務は、主要各国が新型コロナウイルス対策で財政出動を拡大したため、2020年は記録的に急増したが、21年には2割減少して12兆6000億ドル(約1366兆円)となる見通しだが、それでもコロナ禍以前の数年間の平均を5割上回る水準だと格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)グローバル・レーティングは世界のソブリン債務に関する年次調査で指摘している。

 20年のソブリン債発行額は正味でコロナ禍前の予想を2.5倍上回る10兆9000億ドルに達した。これは格付け対象となるソブリン全体のGDP(国内総生産)の13%にあたる。その大半は、米国、日本、中国、英国など経済大国の新型コロナ対策費用を賄うものだった。

 この結果、20年末時点で、ソブリン債の総発行残高は世界のGDPの75%に相当する過去最大の67兆5000億ドルに達した。しかし、各中央銀行の超緩和政策により、利払いコストは過去最低水準に低下した。

 「現在の市場借り入れコストは、多くの先進国の既存債務に対する実効金利を大幅に下回っている」とこのリポートでは指摘している。

 既存のマクロ経済面での脆弱性といった他の信用要素に債務の急増が加わり、S&Pが格付け対象とするソブリン債の2割以上に対する否定的な格付け判断につながった。格下げ対象の大半は新興諸国で、先進国で格付け見通しをネガティブ(弱含み)としているのはオーストラリアとスペインのみ。その他すべての先進国ソブリン債については、格付け見通しを安定的としている。これまでのところ、先進諸国は金融政策と財政政策により経済が支えられており、安定的な格付け見通しを裏付けている。

 「これらの政策が機能し続け、ワクチンが新たな変異ウイルスに対しても期待通りに効果をあげるならば、持続的経済成長への回復が最優先される。成長を回復することが、債務を安定させ、より妥当な水準まで減らす調整につながるためだ」という。

 2022年か23年までに力強く回復するとするS&Pの基本見通しに対するリスクとしては、インフレーションや予想よりも遅い景気回復、感染拡大への公的対策費用を挙げている。インフレで債務返済コストが高くなるが、S&Pとしては持続的なインフレは予想していない。回復の遅れは財政安定化を難しくするし、社会保障の必要性から財政出動を縮小する動機が薄れることになるとしている。
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