画像処理半導体(GPU)大手エヌビディア(NASDAQ:NVDA)の株価はこの1年、S&P500種株価指数をアウトパフォームしてきた。
コロナ禍により在宅ワークや在宅学習が広がったことが同社にとっての追い風となっている。同社の主力商品GeForceを搭載したデスクトップPCやノートパソコンの需要が強く伸び、ゲーム用GPUの売り上げを押し上げている。さらに、データセンターの拡張需要も急拡大している。
エヌビディアの売上高は、主にデータセンターとゲーム関連市場において同社のGPUが積極的に採用された結果、過去4年間で3倍以上に伸びた。
データセンターは、堅実に成長する手掛かりをエヌビディアに与えている。クラウドにシフトする企業が増えるほど、データセンターの必要性がますます高まる。この巨大な需要に対応するために、アマゾン・ドットコム(NASDAQ:AMZN)やアルファベット(NASDAQ:GOOG、GOOGL)、マイクロソフト(NASDAQ:MSFT)などデータセンターを運営する企業は全世界で事業を拡大していて、これがGPUの需要につながっている。
エヌビディアのデータセンター向け売上高は、2016年1月期にはわずか3億3900万ドルだったが、21年1月期には67億ドルに拡大した。
一方、視認性と速度のさらなる改善が求められるゲーム業界では、エヌビディアのGPUがそうした要請に見事に対応している。さらに、「サービスとしてのゲーム(GaaS)」や「多人数同時参加型オンラインゲーム(MMOG)」という概念が登場して、ゲーム向けGPUの需要は飛躍的に増している。
ゲーム向けの売上高は、16年1月期の28億ドルから21年1月期には78億ドルに達した。
さらに、人工知能(AI)技術が幅広く採用されるようになったことも、エヌビディアのGPUにとっての追い風となっている。データセンターや自動車、医療や製造業でのAIを活用した機器の利用が増え、GPUに対する長期的な需要につながると予想される。
データセンター向けGPU市場ではすでに独占的な地位を占めているエヌビディアは、AIの分野でも先行する優位性があり、製品群を拡大することでさまざまな産業におけるAI導入の拡大を業績に結びつけることができている。
加えて、アーム・ホールディングスの買収は、データセンターやモノのインターネット(IoT)、自動運転車、携帯機器など末端間全般での技術にエヌビディアがエコシステムを提供する上で役立つと予想されている。エヌビディアはアームの強固なアーキテクチャーと半導体の設計を活用して、推測技術やドライバー、アクセラレーターの品ぞろえを十分に拡充できる状態にある。
エヌビディアの株価は現在、今年2月16日に付けた高値の614.90ドルから17%余り下落して、以前よりも値ごろ感がある。1年先の予想収益ベースの株価収益率(PER)は、過去5年間の平均が68.01倍であるのに対し、現在は38倍程度で推移している。それでも半導体銘柄全般のPER(予想ベース)が平均22.4倍なので、大幅に割高だとする意見もある。
だが、これまでの堅実な財務状況と、自動車産業や医療、製造業などこれまで手をつけていなかったさまざまな市場で長期的に成長する機会があることを勘案すると、エヌビディアには十分投資に値する条件が整っているようにも思われる。
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